筆者は家電製品を雷サージから守るため、雷ガード付き電源タップを使っていますが引掛シーリングには使えません。
引掛シーリングに取り付けられたLED照明を雷から守る方法を調査・考察し、「雷バスター」に「増改アダプタ2型」「引掛シーリング角型コンセントアダプタ」を組み合わせる方法を試してみました。
なお、雷サージに関する基礎知識説明パートが長いです。本題の「雷バスター」を使った対策を読みたい方は目次から飛んでください。
雷サージの種類
まず、「雷サージ」について説明します。
「雷サージ」とは落雷時に瞬間的に発生する異常な高電圧と、それによって流れる異常な大電流のことです。この雷サージは電線を伝わって建物内に侵入し、家電製品を破壊することがあります。
雷サージは大きく3種類に分類できます。
直撃雷サージ
直撃雷サージは、雷が直接建物や電線に落ちた場合に発生するサージです。エネルギーが非常に大きく、家電の破壊に留まらず火災を発生させることもあります。
一般家庭の設備で直撃雷サージを防ぐことは困難です。家庭に導入できるSPD(サージ防護デバイス)や雷ガード付き電源タップは直撃雷に対応していません。エネルギーが大きすぎるからです。
ビルなど大規模な建物では、避雷針、耐雷トランス、SPD、等電位化などの組み合わせで総合的に直撃雷対策をしているようです。
ただし、市街地にある住宅が直撃雷の被害を受ける確率は低いと言われています。雷はビルなどの避雷針に落ちることが多く、直接建物や電線に落ちるのは稀だからです。
一方で、周囲に高い建物がない山間部や開けた田園地帯の一軒家は、直撃雷のリスクが高くなります。避雷針などを用いた総合的な雷対策が必要になるかもしれません。
誘導雷サージ
雷の被害というと、電線に直撃した雷が建物に入ってくる直撃雷サージのイメージが強いと思います。しかし、雷による家電被害の主な原因は「誘導雷サージ」です。
誘導雷サージは、雷が建物や木などに落ちた時、近くの電線に発生する異常な高電圧です。雷が落ちると、その強い電流が周囲に強力な電磁界を発生させ、近くの電線に過剰な電圧を誘導します。
そうやって発生した誘導雷サージは電線を通じ広範囲に伝わるので、建物の近くに落雷がなくても被害を受けるおそれがあります。直撃雷サージより遥かに発生頻度が高く、市街地でも被害が発生します。
ただし、誘導雷サージは、SPDや雷ガード付き電源タップで防ぐことができます。直撃雷サージに比べればエネルギーが小さいからです。
逆流雷サージ
避雷針や木などに落ちた雷が大地に流れ、アース線から建物内に逆流してくるのが逆流雷サージです。
落雷した場所の近くで発生するので、誘導雷サージに比べると影響を受ける範囲は限定されるものの、家電に重大な被害を与えます。対策としてはSPDの設置や等電位化があります。
雷の地域による違い
雷というと、夏の現象だと考える人が多いのではないでしょうか。これは日本の人口が太平洋側に集中していることも関係していると思われます。
実際、太平洋側の雷はほとんどが夏に発生します。日中の気温上昇とともに積乱雲が発達し、午後から夕方にかけて放電が活発になります。雲は10,000メートル以上の高さまで届きます。
一方、日本海側(※特に東北の日本海側~山陰地方にかけて)では、夏だけではなく冬にも雷が発生します。さらに発生日数は夏より多くなる傾向があります。
大陸からの寒気が比較的暖かい日本海の水蒸気を吸収することで積乱雲が発生。昼夜を問わず雷を落とします。
この冬の雷は日本海側の一部地域で「雪起こし」や「鰤(ぶり)起こし」と呼ばれます。雷が鳴ると雪が降り出したり、鰤が獲れる季節の目安になるからです。
冬の雷を起こす雲の高さは3,000〜6,000mと夏より低め。放電のエネルギーは夏の雷をはるかに上回り、直撃すると建築物に甚大な被害を与えることもあります。
また、冬の日本海側では大地から雲へ上向きに放電するタイプの珍しい雷も見られます。雲の底の高さが1000m以下と低く、地表に近いことが関係しているようです。
日本海側は、夏の雷に加え冬の雷も多いので、1年あたりの雷発生日数が太平洋側の倍以上になることもあります。エネルギーも大きくなりがちなので、雷サージ対策の重要性が特に高い地域だと言えるでしょう。
もちろん太平洋側でも夏の雷被害はあるので、雷サージ対策をしておいて損はありません。
雷サージ全般の対策
雷サージから家電を守るためには、コンセントからプラグを抜くのが最も確実です。雷レーダー(※ネットにて閲覧可)で雷の接近を確認した場合や、遠くで雷鳴が聞こえた場合、すぐに大事な家電のプラグを抜くことが対策になります。
当たり前の話ですが、コンセントにつながっていなければ家電はサージの影響を受けません。
アース線、電話線、LANケーブル、テレビのアンテナ線もサージの侵入源になるので抜いておくと確実です。
なお、単に本体や壁の電源スイッチをオフにするだけでは家電を守れません。これは、過電圧がスイッチ接点間の空気を突き抜けて(※絶縁破壊)、機器の内部まで到達するためです。
ただし、雷雲がすぐ近くまで来ている場合は、むやみにプラグを抜かないほうが安全ではあります。万が一抜いている最中に落雷し過電圧が来ると、感電するおそれがあるからです。
通常の電圧100Vでは電気を通さないプラグの樹脂カバーも、異常な高電圧が来ると絶縁破壊され電気が流れます。
また、直撃雷サージが家電まで到達した場合、炎上する危険性もあるので離れておいたほうが安全です。
火災保険で補償
直撃雷サージは一般家庭に導入できる設備で防ぐのは困難だと言われています。プラグを抜けば大丈夫とはいえ、冷蔵庫など気軽にプラグを抜けない家電もあります。
ただ、直撃雷サージの被害を受ける確率は低いので、いざとなったら火災保険を使って買い替えるくらいの気持ちでいたほうが精神衛生上よさそうです。
火災保険の契約内容によって、補償を受けられる家電は異なります。「建物」のみを対象にした契約だと、エアコンなど建物に備え付けられ簡単に動かせないものだけが補償対象になります。
一方、「家財」が対象になっている契約なら、パソコン、テレビ、冷蔵庫なども補償を受けられます。雷サージ対策を考えるなら家財が対象の契約をしたほうが安心です。
(※保険商品により詳細が異なる場合があるので契約内容をご確認ください。)
誘導雷サージ対策
誘導雷サージは一般家庭でも対策ができます。発生頻度は直撃雷サージより高く、家電のサージ被害の大半はこれが原因だと言われているので、対策しておくと安心です。
雷ガード付き電源タップ
最も簡単に導入できるのは雷ガード付き電源タップです。これにはバリスタという部品が入っています。これが雷サージを吸収することでタップにつながっている家電を守ります。
バリスタには寿命があり、雷サージを吸収するたびに劣化していきます。大きい雷サージを受けると一回で寿命を迎えることもあります。
多くの雷ガード付き電源タップには表示ランプあり、ガード機能が失われると消灯します。タップとしては使えますが、基本的には買い替えです。
雷ガード付き電源タップは複数のメーカーから販売されていて、製品ごとに対応している最大サージ電圧に違いがあります。安価な製品では数千Vまでなので、万全を期すなら、数万Vまで対応している製品を選んだほうが良さそうです。
建物に侵入する誘導雷サージの電圧は数千Vのことが多いですが、数万Vのサージも時々観測されるからです。値段は少し高くなりますけどね。
筆者が調べた限り、最も高い電圧に対応しているタップは、オーム電機の「強力 雷ガードタップ 1個口」です。口が一つしかないのでコンセントを増やす目的では使えませんが、雷サージ対策タップとしては最高クラスの6万V対応です。
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また、純粋なタップではないものの、YAZAWAの「雷バスター 60000V」という製品も6万Vに対応しています。
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この「雷バスター」は使い方が特殊で、通常の電源タップに差し込むことで、雷サージ対応タップにできるという製品です。
入っている部品はおそらくバリスタなので、仕組みは雷ガード付き電源タップと同じだと思われます。雷対策部品を内蔵するか外付けにするかという違いだと考えればよさそう。これが本題の引掛シーリングの雷サージ対策に活躍します。
ちなみに、高価な雷ガード付き電源タップには、アース線を通して大地にサージを逃がす機能が付いた製品もあるようです。次に紹介するSPDに似たような仕組みです。
SPD(サージ保護デバイス)
さらに強力な誘導雷サージ対策には、SPD(サージ防護デバイス)の設置があります。分電盤(≒ブレーカーボックス)に取り付けて使います。
SPDは、屋外の電線から入ってくる過剰な電圧(サージ)を感知すると、余分な電気を大地へ逃がし電圧を制限します。そうすることで屋内では通常通りの電圧が維持されるので、家電が故障するリスクを大きく減らせます。
また、SPDは一個取り付けておけば家全体の家電を保護できるところも魅力です。雷ガード付き電源タップだと家電の数に応じて複数個買う必要がありますからね。
また、電源タップが使えない家電も保護できます(※引掛シーリングに付いている照明器具や、配線直結の機器など)
ただ、SPDには素人が気軽に取り付けられないデメリットがあります。取り付けができるのは有資格者(電気工事士)のみです。感電や火災の危険があるため、資格のない者による取り付けは法律で禁止されています。
よって基本的に業者に依頼することになりますが、工事費用は分電盤と配線の状態によって変動します。分電盤に空きスペースがあり、簡単な工事で取付できる場合は安く済むものの、分電盤の交換・増設が必要な場合や、新たに接地(アース)工事が必要になる場合は費用が上がります。
具体的な費用は業者の方針や工事内容によって変わるので、実際に見積もりを取るまでわかりません。SPD本体の価格はそこまで高くなく、家庭用なら高くても数万円で買えますが、工事費用を合わせると10万円を超える可能性もあります。
SPDの設置は家庭でできる最も強力な雷サージ対策ですが、費用がネックです。
引掛シーリングの雷サージ対策
前置きが長くなりました。ここからが引掛けシーリングの話です。
前述の通りSPD導入すれば引掛けシーリングの機器も保護できますが、ブレーカーボックスに空きスペースがなく、工事が大掛かりになりそうなので断念しました。
コンセントにつなぐ家電は雷ガード付き電源タップで保護していますが、引掛シーリングのLED照明は無防備です。調光調色機能付きで気に入っているので、サージにやられると心理的ダメージが大きい。
なんとかSPD以外で対策できないか考え、最初に思いついたのが、「引掛シーリングをコンセントに変換」→「雷ガード付き電源タップをつなぐ」→「タップのコンセントから再び引掛シーリングに変換する」→「新しい引掛シーリングにLED照明を取り付ける」という案。
引掛シーリングとコンセントの変換アダプタは複数のメーカーから販売されているので入手は簡単です。
ただ、これをやると配線がゴチャゴチャしますし、天井に固定するのも大変です。照明器具の位置変更も伴います。ベストな方法ではないと思い却下しました。
引掛シーリング用の様々なアダプタを眺めつつ、しばらく考えた末に思いついたのが、「雷バスター」と「増改アダプタ2型」「引掛シーリング角型コンセントアダプタ」を組み合わせる案です。
「雷バスター」は、前述の通り電源タップに差し込むことで雷ガード機能を付けられる製品です。
「増改アダプタ2型」はパナソニックが製造している、引掛シーリングの口を1個から3個に増やすための器具です。
「引掛シーリング角型コンセントアダプタ」もパナソニック製で、引掛シーリングを通常のコンセントに変換する器具です。
増改アダプタ2型は、引掛シーリング用の3個口電源タップだと考えることができます。回路としてはタップと同等です。
もし3つの口全てに引掛シーリング角型コンセントアダプタを取り付けると、電源タップそのものになることからもこの理屈は理解できるでしょう。
今回は側面の1つの口にコンセントアダプタを取り付けます。
そのコンセントに「雷バスター」を差し込むと、他の口(残った2箇所の引掛シーリング)につながっているLED照明などを保護することができます。
雷バスターには厚みがありますが、増改アダプタ2型は縦に長いので、天井と照明器具の間に取り付ける隙間が確保できます。
この方法なら面倒な工事は不要。コネクタをつないでいくだけでOK。配線を直接いじるわけではないので電気工事士の資格も不要です。
組み立てたら天井の引掛シーリングにつなぎます。
ちなみに写真で天井に付いている銀色のリングは蛍光灯シーリングライトの名残です。取り付け用金具ですね。いざという時のため蛍光灯を捨てずに保管しているので外していません。
増改アダプタの取り付けできたら、下部の引掛シーリングに通常通りのやり方で照明器具を取り付けます。
分岐させて1つの口に雷バスターを付けただけなので本体には全く影響がありません。問題なく点灯します。
雷ガード付き電源タップが使えない引掛シーリングに、雷ガード機能を追加することができました。照明の高さは若干下がりますが、水平方向の位置は変わりません。
ちなみに余った引掛シーリングの口は別のことに活用できます。本来の使い方通り照明の数を増やしたり、コンセントにして何かをつないだり。
反対側にも同じように雷バスターを付けられますが、1個で十分だと思います。
おわりに
引掛シーリングの雷サージ(主に誘導雷サージ)対策は、これで一応完了です。万全を期すならSPDを導入したほうがいいですけどね。特に保護したい家電が多い場合は、コスト面でも大きな差がなくなる可能性があるため、検討の余地があるでしょう。
なお、今回紹介したのはメーカー推奨の使い方ではありません。試される場合は自己責任でお願いします。
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